blog

2018/09/07 15:14


 

 洗練されたデザインと、独自のフォント(文字体)で構成されたグラフィズムは、没後50年が経過した現在においても群を抜いていると言っても過言ではないかもしれません。伝統的なファッションブランドであるYves Saint-Laurentの「YSL」ロゴも手掛けたA.M.カッサンドル(1901-1968)の代表的な作品には、大型高速船のノルマンディー号や、小説・深夜特急の表紙を飾ったNORD EXPRESSなど旅をテーマにしたものも多く、冒険心や探求心といった旅心を掻き立てるような名作を多く制作しました。また、ピカソに代表されるキュビズムに影響を受けたカッサンドルの画風は、グラフィックを基調とした絶妙なコントラストと直線的なキュビズムを組み合わせ、一度見たら忘れられないような独特の世界観が醸し出されています。

 

 

 

 1901年、ウクライナのハリコフで生まれたカッサンドルはフランス人の両親を持ち、1915年にパリへ移住します。本名はアドルフ・ジャン=マリー・ムーロンという少し長い名前で、広告の仕事に携わるようになったことを機に、A.M.Cassandreというペンネームを用いて自身の作品にサインを記すようになりました。絵画を主軸とした画家を目指していたカッサンドルは1922年に最初の広告ポスターを手掛け、特にカッサンドルが繰り出すタイポグラフィ(活字)は数十年先を読み取っていたかのように鮮烈なデザインで、多くの商業広告を手掛けたり博覧会でグランプリを受賞するなど見る人々を魅了し続けます。そして1926年に自身の事務所を設立し、ファッション雑誌のHarper's Bazaarのカバーを手掛けるなどアメリカでもその突出した感性が発揮されました。後に独立し、ポスター画家として名声を上げたレイモン・サヴィニャックは、当時カッサンドルのアシスタントとして従事していました。

 

 

 こちらは1937年に発行された、フランスの食前酒・DUBONNET社へ向けた広告アートです。こちらが掲載された挿絵入りの新聞は1843年から約100年間フランスで発行され、以前ご紹介させて頂きましたLouis VuittonやROLEXなどのブランドも広告主として名を連ねていました。帽子を被った紳士が「DUBO-DUBON-DUBONNET」というように、徐々にDUBONNETの虜になっていく「言葉遊び」もユニークで、現在でもこの手法を用いた広告が存在するように、時代を先取りしたカッサンドルのユーモアセンスを垣間見ることができます。シンプルなブラック・フレームにシルバーの縁取りマット加工を施し、当時のフランス食文化を回想させるようなクラシック・デザインとなっています。

 

 数々の広告ポスターを制作し、グラフィックデザイナーとして活躍したカッサンドルは1940年代以降は広告の仕事から手を引き、以前からの目標だった画家としての道へ戻り、舞台装飾などを手掛けながら絵画を描きました。物事についてもともと深く考える性格だったと語られているカッサンドルは再婚と離婚を経験し、1968年、フランスのパリにて自ら放った銃弾で命を絶ちました。絵画を描く画家を志していたカッサンドルにとって、ポスター画家としての成功は意図していなかったのかもしれません。しかしながら現在においても革新的で、類まれなる才能が生み出したグラフィックデザインは色褪せることなく、今を生きる人々にも影響を与え魅了し続けています。

 

商品ページ https://afterdark.base.shop/items/13240487

Base Mag.  https://thebase.in/mag/afterdark-base-shop


Small Art SpaceーAfter Dark

Tシャツ1枚500円 その他800円 15,000円以上お買上げの場合は送料当店負担

Search商品検索

Categoryカテゴリー

Guideご利用ガイド